2022年11月、Binanceが日本の取引所「サクラエクスチェンジビットコイン」を買収
世界最大手の仮想通貨取引所、Binance(バイナンス)が日本に上陸しようとしている。2022年11月30日、Binanceは日本の暗号資産交換業者「サクラエクスチェンジビットコイン」のすべての株式を取得した。
サクラエクスチェンジビットコインは2017年5月に設立された日本の仮想通貨取引所で、仮想通貨取引の取次サービスと積立サービスを展開している。現在はビットコイン(BTC)、ビットコインキャッシュ(BCH)、イーサリアム(ETH)など11通貨を扱う。
日本で仮想通貨取引所を運営するには、財務や監査体制などの要件を満たした「暗号資産交換業者」として内閣府に登録される必要がある。Binanceは過去2回、「無登録で日本人向けに暗号資産交換業を行っている」として金融庁から勧告を受けていた。
今回の買収で、Binanceが登録済の暗号資産交換業者として日本の法規制を遵守しながら日本に参入することができるようになった。
海外Binanceでは日本人の新規登録を停止、既存ユーザーは引き続き利用可能
この買収と同時に、Binanceの海外サービス(Binance.com)は日本居住者の新規登録受け付けを停止した。ただしすでに登録されている日本の既存ユーザーは、2022年12月30日現在、引き続きBinance.comを利用できる。
しかしBinanceが本格的に日本に参入したあかつきには、既存ユーザーも本家Binance.comを利用できなくなる可能性が高い。というのは米国BinanceやFTX Japanの前例があるからだ。
- 例1:Binanceは米国で2019年から米国の規制に従った取引所Binance.usを別途運営しており、米国居住者はBinance.comを利用できなくなっている
- 例2:今は破産したFTXが日本の取引所Liquid by Quoineを買収しFTX Japanを開始したときに、日本ユーザーが海外FTXから締め出された
こうした経緯から、Binance.comを既存の日本ユーザーが利用できるのはあくまで経過措置であり、今後Binanceの日本参入に伴って利用停止になると考えられる。
Binanceの日本参入による影響は?
TwitterなどのSNSではBinanceの日本参入を嘆く声が多い。日本では仮想通貨(暗号資産)関連規制が厳しく、Binance Japanではサービスが大きく制限されると予想されるためだ。具体的には下記の2つが挙げられる。
①取引できる仮想通貨の種類が7分の1程度に減少
Binance.comでは現在350種類以上の現物銘柄を取引できる。しかし日本の取引所で売買できる仮想通貨は、2022年12月現在57種類と非常に少ない(JVCEAの資料参照)。Binance Japanも例外ではなく、取引できる仮想通貨の種類は大きく減ってしまうだろう。
主な背景として、日本では新しく通貨を上場させる際に、自主規制団体である日本暗号資産取引業協会(JVCEA)の審査を経てホワイトリストに登録する手続きを踏まなければいけないことがある。そのためBinance Japanでは本家Binanceのような多様な仮想通貨を取り扱うことは難しいと予想される。
ただし、JVCEAは新規上場時の審査を原則廃止する方針だと2022年10月に報道されている。審査が廃止されれば取り扱うことのできる銘柄は日本でも増えるだろう。
②レバレッジ(証拠金)取引の倍率が最大2倍に低下
仮想通貨のレバレッジ(証拠金)取引の最大倍率はBinanceでは最大125倍だが、日本では2020年から最大2倍までに規制されている。
◆レバレッジ取引とは
仮想通貨やFX、株取引において保有している資金以上の金額の取引を行える仕組み。最大倍率125倍であれば、1万円の資金で125万円分までのポジションを持つことができる。現物取引よりもわずかな値動きで大きな利益を期待できるが、その分損失も膨らむ可能性がある。
Binance Japanではレバレッジ取引はできても2倍までとなる。Binanceを使ってレバレッジ取引をしている日本人ユーザーにとっては大きな痛手になるだろう。
Binanceの代わりに使うなら分散型取引所がおすすめ
では、仮にBinance.comが日本で使えなくなった場合におすすめの海外取引所はあるだろうか。
私見だが、現時点ではBinanceと同程度に財務的に信頼できる海外取引所は存在しない。取引所の規模が小さかったり財務の信頼性が低いと、ハッキングに遭った際に資金が返却されない可能性が高い。少しでも不安要素があるならば、海外取引所を利用するのはおすすめしない。
ではどうすればいいのだろうか。日本に上場していない通貨を売買したり高いレバレッジをかけて取引したい場合は、中央集権的に運営される取引所ではなく、分散型取引所(DEX)で取引する方法がある。
分散型取引所では通常の取引所と異なり、資金を特定の企業に預ける必要がない。そのため海外の弱小取引所を利用するよりも資金の安全性が高い。
一方で、分散型取引所のデメリットとして①手数料が取引額の0.25~0.3%程度+ガス代と通常の取引所よりも高くなりがち②自分で資金の保管をする必要があり、パスフレーズをなくすと資金が失われてしまうという点がある。
◆分散型取引所の例
・Uniswap
・dYdX
・Pancake Swap
Binance.comが利用できなくなるケースに備えて、今からこうした分散型取引所を使ってみてはいかがだろうか。分散型取引所の使い方は、また別の記事にまとめたい。
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